草木塔
種田山頭火

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)捨炭《ボタ》山

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]
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若うして死をいそぎたまへる
母上の霊前に
本書を供へまつる
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   鉢の子


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大正十四年二月、いよいよ出家得度して、肥後の片田舎なる味取観音堂守となつたが、それはまことに山林独住の、しづかといへばしづかな、さびしいと思へばさびしい生活であつた。
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松はみな枝垂れて南無観世音

松風に明け暮れの鐘撞いて

ひさしぶりに掃く垣根の花が咲いてゐる

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大正十五年四月、解くすべもない惑ひを背負うて、行乞流転の旅に出た。
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分け入つても分け入つても青い山

しとどに濡れてこれは道しるべの石

炎天をいただいて乞ひ歩く

     
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