なたと九州地方を流浪したことである。
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わかれきてつくつくぼうし

また見ることもない山が遠ざかる

こほろぎに鳴かれてばかり

れいろうとして水鳥はつるむ

百舌鳥啼いて身の捨てどころなし

どうしようもないわたしが歩いてゐる

涸れきつた川を渡る

ぶらさがつてゐる烏瓜は二つ

     大観峰

すすきのひかりさえぎるものなし

分け入れば水音

すべつてころんで山がひつそり

     昧々居

雨の山茶花の散るでもなく

しきりに落ちる大きい葉かな

けさもよい日の星一つ

すつかり枯れて豆となつてゐる

つかれた脚へとんぼとまつた

枯山飲むほどの水はありて

捨てきれない荷物のおもさまへうしろ

法衣こんなにやぶれて草の実

旅のかきおき書きかへておく

岩かげまさしく水が湧いてゐる

あの雲がおとした雨にぬれてゐる

ここに白髪を剃り落して去る

秋となつた雑草にすわる

こんなにうまい水があふれてゐる

年とれば故郷こひしいつくつくぼうし

岩が岩に薊咲かせてゐる

それでよろしい落葉を掃く

水音といつしよに里へ下りて来た

しみじみ食べる
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