名湖
春の海のどこからともなく漕いでくる
鎌倉はよい松の木の月が出た
伊豆はあたたかく野宿によろしい波音も
また一枚ぬぎすてる旅から旅
ほつと月がある東京に来てゐる
花が葉になる東京よさようなら
甲信国境
行き暮れてなんとここらの水のうまさは
のんびり尿する草の芽だらけ
信濃路
あるけばかつこういそげばかつこう
からまつ落葉まどろめばふるさとの夢
江畔老に
浅間をまともにおべんたうは草の上にて
碓氷山中にて路を失ふ
山のふかさはみな芽吹く
国上山
青葉わけゆく良寛さまも行かしたろ
日本海岸
こころむなしくあらなみのよせてはかへし
砂丘にうづくまりけふも佐渡は見えない
荒海へ脚投げだして旅のあとさき
水底の雲もみちのくの空のさみだれ
あうたりわかれたりさみだるる
水音とほくちかくおのれをあゆます
毛越寺
草のしげるや礎石ところどころのたまり水
平泉
ここまでを来し水飲んで去る
永平寺 三句
水音のたえずして御仏とあり
てふてふひらひらい
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