網張る私は私を肯定する
いつでも死ねる草が咲いたり実つたり
日ざかり落ちる葉のいちまい
霽れててふてふ二つとなり三つとなり
青空したしくしんかんとして
ここにわたしがつくつくぼうしがいちにち
百合咲けばお地蔵さまにも百合の花
草にも風が出てきた豆腐も冷えただろ
風がすずしく吹きぬけるので蜂もとんぼも
ふるさとの水をのみ水をあび
ここを死に場所とし草のしげりにしげり
誰にあげよう糸瓜の水をとります
お彼岸のお彼岸花をみほとけに
彼岸花さくふるさとはお墓のあるばかり
秋風の、腹立ててゐるかまきりで
おちついて柿もうれてくる
重荷を負うてめくらである
つくつくぼうしあまりにちかくつくつくぼうし
柿の木のむかうから月が柿の木のうへ
寝床へ日がさす柿の葉や萱の穂や
何か足らないものがある落葉する
郵便屋さん
たより持つてきて熟柿たべて行く
百舌鳥のさけぶやその葉のちるや
樹明君に
うらから来てくれて草の実だらけ
ともかくも生かされてはゐる雑草の中
旅から旅へ
わかれてきた道がまつすぐ
月も水底に旅空がある
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