たい
[#ここから3字下げ]
秋のたより一ト束おつかけてゐた
波音の松風の秋の雨かな
歩るくほかない秋の雨ふりつのる
[#ここで字下げ終わり]

 十一月五日 快晴、行程五里、佐喜浜、樫尾屋。

すっきり霽れあがって、昨日の時化は夢のように、四時に起きて六時立つ。
今日の道[#「今日の道」に傍点]はよかった、すばらしかった(昨日の道[#「昨日の道」に傍点]もまた)。
山よ海よ空よと呼かけたいようだった。
波音、小鳥、水、何もかもありがたかった。
太平洋と昇る日[#「太平洋と昇る日」に傍点]!
途中時々行乞。
お遍路さんが日にまし数多くなってくる、よい墓地があり、よい橋があり、よい神社があり、よい岩石があった。……
おべんとうはとても景色のよいところでいただいた、松の木のかげで、散松葉の上で、石蕗の花の中で、大海を見おろして。
ごろごろ浜のごろごろ石、まるいまるい、波に磨かれ磨かれた石だ。
早いけれど、佐喜浜の素人宿ともいいたいような宿に泊った、浜はお祭、みんな騒いでいる、今夜も私は二杯傾けた! 一室一人で一燈を独占した、おかげで日記をだいぶ整理することが出来た。
行乞の功徳、昨日は銭四
前へ 次へ
全40ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング