、高商に高橋さんを訪ねて久々で逢えた事、その夜来て下さって宿銭を保証して小遣を下さった事。
しみじみ自分の無能を考えさせられた日夜[#「自分の無能を考えさせられた日夜」に傍点]がつづいたことである!
十二月三日 晴。
気分ややかろし、第五十七回の誕生日、自祝も自弔もあったものじゃない! 同室の青年に話していると、高橋さん来訪、同道して藤岡さん往訪。
招かれて、夕方から高橋さんを訪う、令弟(茂夫さん)戦死し遺骨に回向する、生々死々去々来々、それでよろしいと思う。
十時ごろ帰宿、酒がこころよくまわらないので、そしていろいろさまざまのことが考えられるので、いつまでもねつかれなかった。
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或る日
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なんとあたたかなしらみをとる
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十二月三日夜、一洵居、戦死せる高市茂夫氏の遺骨にぬかづいて
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供へまつる柿よ林檎よさんらんたり
なむあみだぶつなむあみだぶつみあかしまたたく
蝋涙いつとなく長い秋も更けて
わかれていそぐ足音さむざむ
ひなたしみじみ石ころのやうに
さかのぼる秋ふかい水が渡れない
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