木紅葉、歩々の美観、路傍の家のおばあさんからふかし薯をたくさん頂戴した、さっそく朝食として半分、またの半分は昼食として、うまかった、うれしかった。
三里ちかく来ると御三戸橋《ミミトバシ》、ここから面河渓へ入る道が分れている、そこの巨大なる夫婦岩[#「夫婦岩」に傍点]は奥地の風景の尋常でなかろうことを思わせるに十分である、私はひたむきに久万へ――松山へといそいだ。
山がひらけるともう久万町[#「久万町」に傍点]だった、まだ日は落ちなかった、札所下の宿に泊ることが出来た、おばあさんなかなかの上手者、よい宿である、広くて深切で、そして。――
五日ぶりの宿[#「五日ぶりの宿」に傍点]、五日ぶりの風呂[#「五日ぶりの風呂」に傍点]!(よい宿のよい風呂)
街まで出かけて、ちゃんぽんで二杯ひっかけた、甘露々々、そして極楽々々(宿へは米五合銭三十銭渡して安心)。
同宿十数人、同室の同行(修行遍路)から田舎餅を御馳走になった、何ともいえない味だった、ありがとう。
半夜熟睡、半夜執筆、今夜は夜の長いのも苦にならない。
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(夕)   (朝)
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ぬた     味噌汁
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