]の葉を数枚摘む。
松原がつづく、海も空も日本晴、秋――日本の秋[#「日本の秋」に傍点]、道そいの畑には豌豆がだいぶ伸びている、浜おもとがよく茂っている、南国らしい、今日は数人のおへんろさんと行き逢ったが、紅白粉をつけた尼さんは珍らしかった、何だか道化役者めいていた、このあたりには薄化粧した女はめったに見あたらないのに。
喜良川の松原で、行きずりの老遍路夫婦と暫らく話した、何となしに考えさせられる事実である、三里あまり歩いて来て、羽根[#「羽根」に傍点]、その街はずれの宿――屋号が書き出してない――家に泊った、木賃宿としては新らしい造作で、待遇も悪くない、部屋も井戸端も風呂も、そして便所も広々として明るくて、うれしかった、なかなかよい宿であった。
今日は三時前の早泊り、先夜昨夜に懲りたから。
清流まで出かけて、肌着や腰巻を洗濯する、顔も手も足も洗い清めた、いわば旅の禊[#「旅の禊」に傍点]である、こらえきれなくて一杯ひっかける、高いと思うたけれど、漬物を貰い新聞(幾日ぶりか!)を読ましてくれたから、やっぱり高くはなかった、明日は明日の風が吹こう[#「明日は明日の風が吹こう」に傍点]、今
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