)、とうとう室戸の本町まで歩いて、やっと最後の宿のおかみさんに無理に泊めて貰った、もうとっぷり暮れていたのである。
片隅で無燈[#「片隅で無燈」に傍点]、一杯機嫌で早寝した(風呂があってよかった)。
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(十一月六日)“室戸岬”へ
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波音しぐれて晴れた
あらうみとどろ稲は枯れてゐる
かくれたりあらはれたり岩と波と岩とのあそび
海鳴そぞろ別れて遠い人をおもふ
ゆふべは寒い猫の子鳴いて戻つた
あら海せまる蘭竹のみだれやう
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東寺
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うちぬけて秋ふかい山の波音
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土佐海岸
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松の木松の木としぐれてくる
[#ここで字下げ終わり]
十一月七日 秋晴、行程四里、羽根泊(小松屋)。
早起、津寺[#「津寺」に傍点]拝登、行乞三時間、十時ごろからそろそろ西へ歩く――(銭十六銭米八合)。
途中、西寺[#「西寺」に傍点]遥拝(すみません)、不動岩[#「不動岩」に傍点]の裏で、太平洋を眺めながら、すこし早いが、お弁当を食べる、容樹《アコウ》[#底本は「容」の左に「ママ」と注記
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