菊とはおしまいになった。ほうれんそうがだんだんとよくなった。こやし――それも自給自足――をうんと[#「うんと」に傍点]与えたためだろう。ちさはあいかわらず元気百パア、私も食気百パアというところ。
 畑地はずいぶん広い、とても全部へは手が届かないし、またそうする必要もない、その三分の二は雑草に委任、いや失地回復させてある。
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よう燃える火で私ひとりで
大きな雪がふりだして一人
いたづらに寒うしてよごれた手
もう暮れたか火でも焚かうか
いちにち花がこぼれてひとり
雪あしたあるだけの米を粥にしてをく
ひとりの火の燃えさかりゆくを
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 これらの句は、日記に記しただけで、たいがい捨てたのですが、わざとここに発表して、そしてこの発表を契機として、私はいわゆる孤独趣味、独りよがり、貧乏臭、等、を清算する、これも身心整理の一端です。樹明君にお嬢さんが恵まれた。本集所載の連作には、夫として父としての真実が樹明的手法で表現されている。
 私は貧交ただ駄作を贈って、およろこびのこころを伝える外なかった。
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雪となつたが生れたさうな(第六感で
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