りだした、びつしより濡れたけれど、関門風景がよろしい。
長府を通りすぎて、王司村を一時間ばかり行乞した、帰庵しても、米がない石油がない醤油がないから。
小月は競馬で人出が多い、三時の汽車に乗る、嘉川着四時二十分(小郡下車だと六銭多くかゝる、私の倹約も必要からだが、ホンモノである)。
途中、刈萱を摘んで帰庵したのは五時近かつた。
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・しらなみ、ゆうゆうと汽船《ふね》がとほる
波音の霽れてくるつく/\ぼうし
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九月三日[#「九月三日」に二重傍線]
六時まへに帰庵、さつそく水をくみ、火を焚き夕餉の支度をする。
トマトがすきて[#「きて」に「マヽ」の注記]によくうれてゐた、すぐもいでたべる、うまい/\。
かるかやを活ける、よいかなかるかや。
虫がなく、うちの虫[#「うちの虫」に傍点]がなく。
風も何のその、手足をのび/\と伸ばしてぐつすり寝た。
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とりとめもない言葉
死は生の解決ではないけれど、それが休息であることは疑へない。
生に清算はありえない、清算がありえないほど、かぎりなく伸びてゆくのが生
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