行乞記
大田から下関
種田山頭火

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)坑口《マブ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)八月廿八日[#「八月廿八日」に二重傍線]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すが/\しい
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 八月廿八日[#「八月廿八日」に二重傍線]

星晴れの空はうつくしかつた、朝露の道がすが/\しい、歩いてゐるうちに六時のサイレンが鳴つた、庵に放つたらかしい[#「い」に「マヽ」の注記]おいた樹明君はどうしたか知ら!
駄菓子のお婆さんが、よびとめて駄菓子を下さつた。
山口の農具展覧会行だらう、自転車と自動車とがひつきりなしにやつてくる。
山のみどりのこまやかさ、蜩のしめやかさ。
真長田村――湯ノ口近く――で、後からきた自動車がすつと止まる、そして洋服姿が出てきて、にこにこしながら近づく、敬君だ、まるで予期したやうな、約束したやうな邂逅だ、自動車に乗ることだけは断つて、今夜はゆつくり飲むことにする。
湯ノ口行乞、伊佐へ左折しないでまつすぐ大田へ、
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