である。
生の決算! それは死だ。
生の破算! それも死だ。
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九月四日[#「九月四日」に二重傍線]
朝焼、曇、雨、厄日頃らしい天候。
蒜の花[#「蒜の花」に傍点]はおもしろい、留守の間に咲いてゐた。
樹明君がきてくれた、その憂欝な顔、私も憂欝だつた。
秋、秋寒を感じる、蚊が少くなつた、夜は晴れて月がよかつた。
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・陽がとゞけば草のなかにてほほづきの赤さ
・つく/\ぼうしもせつなくないてなきやんだ
改作追加
・秋空の井戸がふかうなつた
・雲が澄む水を汲むげんのしようこの花
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九月五日[#「九月五日」に二重傍線]
秋晴、終日寝ころんで読む、牧水の紀行文集を読んでゐると一杯やりたくなる。
とても行乞なんか出来ない。
悪夢――鮹にとりつかれた夢を見た。
夕方、樹明来、久しぶりに飲む、うまい酒だつた、君はおとなしく帰つた、私もおとなしく寝た。
月もよい、虫もよい、よくないのは人間だ。
「松」の裸木追悼号を読んで、あれやこれや考へさせられた。
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・草ふかく木の実のおちたる音のしづか
ひ
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