とりでだまつてにがい茄子をたべることも
・かへるより障子あけるより風鈴のなる
・法衣のやぶれも秋めいた道が遠くて
[#ここで字下げ終わり]

 九月六日[#「九月六日」に二重傍線]

今朝は食べるものがない、梅湯(茶もないから)を飲む。
行乞気分にはどうしてもなれない、やうやく米一升捻出した。
まことに我がまゝ気まゝな一日だつた。

 九月七日[#「九月七日」に二重傍線]

秋空一碧、けふも休養する。
だるく、ものうく、わびしく、せつなく。……

 九月八日[#「九月八日」に二重傍線]

日本晴、清澄明徹いはんかたなし。
今日はどうでもかうでも行乞しなければならないので、午前中近在を歩いた、行乞相は満点に近かつた(現在の私としては)。
歩くとよくわかる、私の心臓はだいぶんいたんでゐる。
歩いたおかげで、今日明日はおまんま[#「おまんま」に傍点]がたべられる。
芙蓉、紫苑、彼岸花が咲いてゐた、芙蓉はとりわけうつくしかつた、日本のうつくしさとおごそかさとを持つてゐる。
今朝はうれしかつた、大山澄太さんのハガキが私を涙ぐましたほどうれしかつた。
物事にこだはる心[#「物事にこだはる心」に傍点
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