へて、日和山公園へ登つて下つて、地橙孫居を訪ねた。
会談一時間ばかり、そこを出てから(結城孫三郎のあやつり人形見物はやめにして)やたらに歩きまはつた、ネオンサインのうつくしさ、デパートのさわがしさ、飲んだり食べたりのいそがしさ。
十時頃、駅附近で西と東とに別れた、黎々火さんはあたゝかい家庭へ、私はうるさい安宿の二階へ。
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黎々火居
琴がならべてある涼しい風
・手入とゞいた松をはなれない月のあかるさ
・月が風が何もない空
・腹いつぱいの月が出てゐる
月から風が、籐椅子の酔心地
・感じやすくて風の蘭竹のおちつかない旅
関門海峡
・灯に灯が、海峡の月冴えてくる
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九月三日[#「九月三日」に二重傍線]
明けても酔がさめない、湯にとびこむ、一杯ぐつとひつかける、そしてやつぱりこゝからひきかへすことにきめた、何となく身心が不調で気がすゝまない、海峡を渡るだけの元気が出てこない。
歩けるだけ歩くつもりで歩く、赤間宮参拝、しみ/″\としたものがあつた、句は一句もできなかつたが、しかしそれで十分だ。
だん/\と時化てきた、風が強く雨がふ
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