の名にもいろ/\あるが。――
夜長橋、月見橋、納涼橋などは風雅で、しかも嫌味がない、解り易くて要を得てゐる、日本の田舎の橋らしい名である。
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・山桐のかたまつて実となつてゐる
・この山里にも泊るところはあるかなかな
・制札にとんぼとまつてゐる西日
・こうろぎ、旅のからだをぽり/\と掻く
・日ざかりの石ころにとんぼがふたつ
・なんとすずしい松かげに誰もゐない
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行程四里。
所得、銭五十三銭と米一升六合。
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九月二日[#「九月二日」に二重傍線]
今日も好晴。
二人で朝の散歩。
おひるはまたお酒をいたゞいた、行乞米を貰つて下さつてお布施を下さつた、襦袢の手入、浴衣の洗濯、そして褌まで頂戴した、黎々火さんはほんとうによい肉縁の人々を持つてゐる、お父さんの温情、お母さんの慈愛、あゝ羨ましい。
二時お暇乞する、二人で下関へ出かけるのである、途中で沢田さんといふ方に招かれてちよつと話す、色紙に悪筆を揮ふ。
電車で下関へ着いたのは四時頃、茶碗、シヤボン、本、小刀、インキ等を買ふ、そして本町の馴染の宿へいつて荷物を預け、浴衣に着換
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