、自動車といふものゝありがたさ、友人といふものゝありがたさを痛感する。
私にはゼイタクきはまる一夜の遊楽でありました。
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Y養鶏場三句
・鶏《とり》はみなねむり秋の夜の時計ちくたく
・うたふ鶏も羽ばたく鶏もうちのこうろぎ
秋の夜の孵卵器の熱を調節する
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飲めなくなつたさびしさ
酔へなくなつたみじめさ
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追加
・月が落ちる山から風が鳴りだした
・蛇が、涼しすぎるその色のうごく
出来秋のなかで独りごというてゐる男
秋らしい村へ虚無僧が女の子を連れて
・秋日和のふたりづれは仲のよいおぢいさんおばあさん
・晴れて雲なく釣瓶縄やつととゞく
・声はなつめをもいでゐる日曜の晴れ
[#ここで字下げ終わり]
九月十日[#「九月十日」に二重傍線]
秋ぢや、秋ぢや、といふほかなし、身心何となく軽快。
朝飯のとき、庵の料理はまづいなあとめづらしく思つた、何しろ昨夜の今朝[#「昨夜の今朝」に傍点]だから。
△昨日忘れてきたと思つた万年筆は浴衣の袖の底にあつた、忘れてきたと忘れてゐたところにまた私の老が見える、この万年筆は十
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