化」に傍点]もない、蜘蛛が網を張り、油虫が這ふだけ!
梭二さん贈るところの松笠風鈴[#「松笠風鈴」に傍点]はうれしかつた。
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・山頭火には其中庵がよい雑草の花
・糸瓜伸びたいだけのぼつたりさがつたりして花つけた
・風はうらから風鈴の音もつゝましく
・仏前しづかに蝶々きてとまる
・もどつてきたぞ赤蛙
・ひえ/″\として夜明ける風鈴のなる
・なにかつかみたい糸瓜の蔓で朝の風ふく
・草のすゞしさは雀もきてあそぶ
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八月一日[#「八月一日」に二重傍線]
ねた、ねた、ねた、ほんとうによくねた、牛のやうにねた。
くもり、あるけばあついが、ぢつとしてをればすゞしい。
なんと松笠風鈴の音のよろしさ、其中庵はあたらしく一つの声を与へられて、ひとしほ閑寂のおもむきを増した。
新秋清涼の気がどことなくたゞようてゐる。
買物いろ/\、――酢、醤油、石油、煙草、端書――行乞四日間の所得はすつかり無くなつてしまつた。
樹明君徃訪(学校に)、大村君来訪(午後半日)。
近代野蛮人[#「近代野蛮人」に傍点]といふ語の意義ふかきをおもふ。
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