句集自序の一節として
私の句はまだ/\水つぽいけれど、へたなカクテルのいやなあくどさはないと信じてゐる。……
(描く句[#「描く句」に傍点]、述べる句[#「述べる句」に傍点]、うたふ句[#「うたふ句」に傍点])
(説く句、叫ぶ句、呟く句)
[#ここで字下げ終わり]
八月二日[#「八月二日」に二重傍線]
朝風のこゝろよさ、風鈴もしめやかな音色。
夕立時雨でめつきり涼しくなつた、風がふいて蚊もすくなかつた。
△歌でも句でも、詩は自然景象[#「自然景象」に傍点]を通して生活感情[#「生活感情」に傍点]がにじみ出てゐなければならない、いひかへれば自然が自己[#「自然が自己」に傍点]とならなければならないのである。
今日は誰も来なかつた、誰をも訪ねなかつた、ものいふことはなかつた、郵便と新聞とが来たゞけ。
胡瓜、胡瓜、茄子、茄子だつた、そして炭がなく薪もなくなつたので、まことに苦心さんたんであつた。
[#ここから2字下げ]
・ころころころげてまんまるい虫のたすかつた
・とまるより鳴き、鳴きやめるより去つた夕蝉
・降つたり照つたりちよろ/\するとかげの子
・まづしい火をふく粉炭がはねた
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