田岳のよさを見直した、河原には朝顔、撫子、月草、そして苅萱も。
今日はプチブル婆、プチブル爺に対して腹が立つた、そして乞食の負惜[#「乞食の負惜」に傍点]を体験した。
田舎の子沢山を見て憤慨する、何故彼等は birth−control しないのか!
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  行乞が私に与へた恩恵
一、何でもおいしく食べられる
一、ほとんど腹が立たないやうになつた
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飯のうまさ、水のうまさ(モチ酒のうまさも)、食べるもの飲むもののうまさは行乞してからほんとうに解つた。
徒歩禅[#「徒歩禅」に傍点]は断じて徒労禅[#「徒労禅」に傍点]ではなかつた。
歩々清風[#「歩々清風」に傍点]である。
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今日の所得は銭十八銭、米四升一合。
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 七月三十一日[#「七月三十一日」に二重傍線]

さすがに汽車は早い、有難い、五時にはもう其中庵主として夕食の仕度にいそがしかつた、胡瓜、茗荷、トマト、そしてイリコ、それで一杯ひつかけて寝た、手足をぞんぶんに伸ばして。
トマトはほんとうにうまい。
戻つて来て、何の変化[#「変
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