にはおそかつた蜩の安宿で
枕がひくうて水音がたえない一夜
たつた一軒家の白木槿咲いてゐる
・水瓜はごろりと日ざかりの畑
(乞食坊主の頭陀のおもさよ)
水音のかなかなの明けてくる
・窓は朝蜘蛛のうごかない山がせまり
ながれ、寝苦しかつた汗をながす
・みんなたつしやでかぼちやのはなも
・こどもばかりでつくつくぼうし
・家あれば水が米つく
・どこまでついてくるぞ鉄鉢の蠅
・家がとぎれると水音の山百合
煙が山から人間がをる
仲よく朝の山の草刈る
・いたゞきのはだかとなつた
・こゝからふるさとの山となる青葉
山奥の田草とる一人には鶯
人にあはない山のてふてふ
[#ここで字下げ終わり]
七月廿九日[#「七月廿九日」に二重傍線]
曇、六時から行乞、ずゐぶん暑い、流れに汗を洗ふ、山がちかく蝉がつよく、片隅の幸福[#「片隅の幸福」に傍点]とでもいふべきものを味ふ。
今日の道はよかつた、山百合、もう女郎花が咲いてゐる、にい/\蝉、老鶯、水音がたえない、佐波川はなつかしかつた。
あの無[#「無」に「マヽ」の注記]限者のうちへはおいでなさい、なか/\の善根家で、たくさんくれますよと
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