当地の河原はたいへん賑ふといふ、郵便局へ出かけたが、街は青竹のうつくしさで埋められてゐる、晩には煙火見物に出かけるかな。
夫婦で棚機竹をかついだり、家内惣[#「惣」に「マヽ」の注記]動員で色紙飾紙を竹にとりつけてゐる、七夕祭は女性的だが、たしかに東洋的な日本らしい情調を帯びてゐる。
うつくしいかな、なつかしいかな、大和撫子、常夏の花。
いぬころ草を活けて、これもをはりのよさを味ふ。
糸瓜がちいさくぶらりとさがつてきた。
巡査来、戸籍調べらしい、飛行機来、一句くれていつた、冀くは今夜も敬坊来、樹明来、南無アルコール大明神来!
茄子がうまかつた、漬菜がほんとうにうまかつた。
街の七夕夜景を見物して歩いた、提灯のほかげはまつたくうつくしい、親しみふかい日本美観である、なまじ近代風を加味したのはかへつて面白くない、それから河原へ行つた、たいへんな人出だ、果物店、氷店の羅列である、久しぶりに夜店風景を満喫した。
月がよかつた、風も涼しかつた、煙火のポン/\もうれしかつた。
人形芝居の催しがあつた、やたらに人形が動く、どこら[#「ら」に「マヽ」の注記]そこらで蛙が鳴いてゐた。
街の人ごみの中で、今
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