んだり汚れ物を洗つたりしてゐると、果して敬坊来車、酒を持つて、間もなく樹明も来車、茹鮹を下げて。
月がよい、昨夜もよかつたが今夜は一層よい、月あり酒あり[#「月あり酒あり」に傍点]、友あり寝床あり[#「友あり寝床あり」に傍点]。……
二人をよい月へ見送つて、よい月へごろりと寝る。
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・鳴るは風鈴、この山里も住みなれて
・伸びあがつて炎天の花
・はぶさう葉をとぢてゐる満月のひかり
・すずしい月へふたりを見おくる
・子のことも考へないではない雲の峰がくづれた
・灯して親しいお隣がある(改作)
・親子でかついでたなばたの竹
・風は裏藪から笠と法衣と錫杖と
・暑い土のぽろ/\こぼれるをくだる
・葉かげふかくうもれてゐる実があつた
・据えた石もおちついてくる山をうしろに
・炎天の枯木よう折れる
・真昼を煮えてゐるものに蝉しぐれ
・このうまさは山の奥からもらつてきた米
・風鈴の音のたえずして蝉のなくことも
[#ここで字下げ終わり]

 八月七日[#「八月七日」に二重傍線]

すこし飲みすぎですこし朝寝、しかし天地明朗である、夏の日[#「夏の日」に傍点]を感じる。
今日は七夕、
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