(行乞)
・風が吹きぬける風鈴と私
・いちぢくにからまつたへちまの花で
 人を待つこれから露草の花ざかり
・何もしないで濡タオルいちまいのすゞしさよ
・死んだまねして蜘蛛はうごかない炎天
・青葉がくれの、あれは Ichifuji の灯
[#ここで字下げ終わり]

 八月六日[#「八月六日」に二重傍線]

曇、朝の仕度をしてゐるうちに晴れてくる。
昨夜の残物(むろん酒もある)を平げる、あゝ朝酒のうまさ、このうまさが解らなければ、酒好きは徹してゐない、敬君、樹明君どうです?
敬君は何も食べないで県庁へ出張。
木炭を持つてきてくれないのにフンガイする、油虫の横暴にもフンガイする、フンガイしたところでどうにもならないけれど。
朝蝉はよいな、敬坊いふ『こゝは極楽浄土だ』山は答へる、『さびしい浄土だ[#「さびしい浄土だ」に傍点]』
樹明君来庵、なが/\と寝た、私はなるだけ昼寝をしないやうにしてゐる、それでなくても夜中寝覚勝だから。
もう早稲田には穂が出てゐる。
敬坊なか/\戻つて来ない、二人でぢり/\する、二人だけで物足りない夕飯を食べて、敬坊の家の方へ散歩する、樹明君は敬君徃訪、私は帰庵、水を汲
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