かなかな
・夕凪あまりにしづかなり豚のうめくさへ
・遠くから街あかりの、ねむくなつてねる
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 七月十九日[#「七月十九日」に二重傍線]

酒はよいかな、とてもよい眠りだつた、そしてよい眼覚めだつた。
兎肉とキヤベツと玉葱と胡瓜。
△犬ころ草がやたらにはびこる、その穂花が犬ころのやうな感じで好きな草だ、其中庵の三雑草として、冬から春はぺん/\草[#「ぺん/\草」に傍点]、春から夏は犬ころ草[#「犬ころ草」に傍点]、秋はお彼岸花[#「お彼岸花」に傍点]をあげなければなるまい、そのほかに、草苺、青萱、車前草、蒲公英。
毎日、茄子胡瓜でもあるまいから、そしてちやうど駄目になる燠があつたから、これでをはりの蕗を採つて来て佃煮にした、蕗のほろにがさには日本的老心[#「日本的老心」に傍点]といつたやうな味がある。
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・朝風の青草食みつつ馬は尾をふる
・日影ゆるゝは藪ふかく人のゐて
・炎天の機械がうごく人がうごく(アスフアルトプラント)
    □
 ひらいてゆれてゐる鬼百合のほこり
・朝からはだかで雑草の花
 糸瓜さいて垣からのぞく
 殺された蚊でぞん
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