」に傍点]。
荒瀧山、ちよつとよい山だ。
けふのおべんたうはおいしかつた、敬治君の奥さんにあつくお礼を申上げなければならない。
けふぐらゐ水をたくさん飲んだことはあまりない、まことにうまい水だつた、山の水は尊し[#「山の水は尊し」に傍点]。
米が重かつた、腰が痛むほどだつた、しかしこの米のおかげで暫らく休養することができるのだ。
小野を通つて帰庵したら六時を過ぎてゐた、戻るより水を汲み火を熾し飯を炊いた、もちろん寝酒は買うて戻ることを忘れてゐない。
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銭 四十三銭
今日の所得 行程七里
米 一升六合
[#ここで字下げ終わり]
此度の敬治居訪問はほんとうによかつた、敬治君にもよりよく触れたし、奥さんのよいところよくないところも解つた、敬坊万歳、どなたも幸福であれ。
この旅中に私の不注意を実証する出来事が三つあつた、敬治居で眼鏡をこわしたことが一つ、途上辨当行李をなくしたことが一つ、そしてあとの一つは帰庵して、すこし酔うて茶碗を割つたことである、こゝに記して自己省察の鍵とする。
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けふも暑からう草の葉の
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