た
朝風につるまうとする犬はくゝられてゐる
・草も蛙も青々としてひつそり
・山は青葉の、青葉の奥の鐘が鳴る
・蝉しぐれこゝもかしこも水が米つく
ながれをさかのぼりきて南無観世音菩薩
・山からあふれる水の底にはところてん
御馳走すつかりこしらへて待つ蜩
・寝ころぶや雑草は涼しい風
・道筋はおまつりの水うつてあるかなかな
うらは蜩の、なんとよい風呂かげん
おかへりがおそい油蝉なく
かなかな、かなかな、おまつりの夜があける
[#ここで字下げ終わり]
七月十六日[#「七月十六日」に二重傍線]
かなかな、かなかな、みんみん、みんみん。
朝風はよかつた、朝飯はうまかつた。
河原朝顔の一輪が私をすつかり楽天的にした。
とめられたけれど七時出発、友情のありがたさ、人間性のよさをひし/\と感じながら。
今日の道はよい、といふよりも好きな道だつた、山村の景趣を満喫した、青葉もうつくしいし、水音はむろんよかつた、虫の声もうれしいし、時々啼いてくれるほとゝぎすはありがたかつた。
木部行乞、十一時から一時まで二時間。
歩くために歩く、歩いて歩くことそのことを楽しむ[#「歩くことそのことを楽しむ
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