げ
見まはせば山苺の三つ四つはあり
・鉄鉢の暑さをいたゞく
・蜩よ、私は私の寝床を持つてゐる
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七月十五日[#「七月十五日」に二重傍線]
曇、降りさうで降らない、すこし憂欝。
八時から十一時まで大田町行乞。
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所得――銭四十四銭に米一升三合
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午後は東御嶽観音様へ詣でる、青葉、水音、蝉がなき鶯がなく、とてもしづかな山村だつた、そこから赤郷へ河鹿聴きに出かけたが、暑くはあるし、興味もうすらいだので途中から引き返す、徃復三里の散歩だ。
山の茶屋には筧の水があふれて、ところてん[#「ところてん」に傍点]が澄んでゐた。
敬治居はなか/\にぎやかである、坊ちやんが時々あばれる、繋がれた仔犬もあばれる、小さいお嬢さんがなかなか茶目公だ。
敬坊は綾木へ出張、私は一人でちび/\やつた。
水のうまさ、豆腐のうまさ、これは自慢するだけの値打がある。
暮れきつてから、敬坊がMといふ友人といつしよに、だいぶ酔うて戻つてきた、三人でまた飲んだ。
ほどよく酔うて、ぐつすり眠つた。
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朝ぐもりもう石屋の鑿が鳴りだし
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