発生的でなければならない。
酔ふことは飲むことの結果であるが、いひかへれば、飲むことは酔ふことの源[#「源」に「マヽ」の注記]因であるが、酔ふことが飲むことの目的であつてはならない。
何物をも酒に代へて悔いることのない人が酒徒[#「酒徒」に傍点]である。
求むるところなくして酒に遊ぶ、これを酒仙[#「酒仙」に傍点]といふ。
悠然として山を観る、悠然として酒を味ふ、悠然として生死を明らめるのである。
[#ここで字下げ終わり]

 七月廿一日[#「七月廿一日」に二重傍線]

早く眼はさめたけれど、あたりが明るくなつてから起きた、燈火がないのだから、くらがりでは御飯の仕度も出来ないといふ訳で。
朝ぐもり、日中はさぞ暑からう。
此頃は夜よりも昼を、ことに朝が好きになつた。
郵便を待つ、新聞を待つ、それから、誰か来さうなものだと待つ、樹明君はたしかに今晩来るだらうと待つてゐる。
郵便局へ出かけたついでに、冬村君の仕事場に立ち寄る、君はもう快くなつて金網機をセツセと織つてゐる、よかつた/\。
とかげの木のぼりを初めて見た、蟻の敏活にさらに驚かされた、黒蜂(? 蜂蠅といつてもよからう)はまことにうる
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