梅雨ふる
・はれたりふつたり青田となつた
 梅の実も落ちたまゝお客がない
・梅雨晴の大きい家が建つ
    □
・山頭火は其中庵にふくろうがうたふ
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△秘密[#「秘密」に傍点]を持たないやすらかさ、身心かくすところなくして光あまねし、浮世夢の如く塵に似たり、その夢を諦らめその塵を究めるのが人生である。
△食ふや食はずでも(正確にいへば、飲むや飲まずでも)山頭火にはやつぱり其中庵がいちばんよろしいことを今日もしみ/″\痛感した。
△捨てる事と拾ふ事[#「捨てる事と拾ふ事」に傍点]とは、その心構へに於て同一事である。
△しづかに燃えるもの[#「しづかに燃えるもの」に傍点]――その生命――その感動がなければ芸術は(宗教も科学も哲学も)、光らない、俳人よ、先づ自己を省みよ。
△日が暮れたら寝る、夜が明けたら起きる、食べたくなつたら食べる、歩きたくなつたら歩く、――さういふ生活へ私は入りつゝある、それは無理のない、余裕のある、任運自在の生活である。
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・この花を見つけた蝶の白い風
・陽が落ちるそよ風の青い葉が落ちる
・ゆふ風いそがしい蜘蛛のいとなみが
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