行乞記
伊佐行乞
種田山頭火

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)爪《ツメ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「气<慍のつくり」、第3水準1−86−48]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 六月廿日[#「六月廿日」に二重傍線] (伊佐行乞)

朝あけの道は山の青葉のあざやかさだ、昇る日と共に歩いた。
いつのまにやら道をまちがへてゐたが、――それがかへつてよかつた――山また山、青葉に青葉、分け入る[#「分け入る」に傍点]といつた感じだつた、蛙声、水声、虫声、鳥声、そして栗の花、萱の花、茨の花、十薬の花、うつぎの花、――しづかな、しめやかな道だつた。
途中行乞しつゝ、伊佐町へ着いたのは一時過ぎだつた、こゝでまた三時間ばかり行乞して、どうやか[#「やか」に「マヽ」の注記]うやら、野宿しないで一杯ひつかけることができた、ありがたいやら情ないやらの心理を味つた
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