に二重傍線]
曇、后晴、やつぱり空梅雨か。
早起、好日、さてもほがらかな今朝なるかな。
糸瓜を植ゑる、五本生えたが三本は虫に喰はれた。
道ばたの青梅を十個ばかり盗んできて(捨てゝあるのだから、むしろ拾うてきて)漬ける、果して焼酎漬が出来るか知ら。
可愛い赤蛙がぴよんと飛ぶ、そして考へてゐる、まだ子供、いや青年だ。
樹明君が陰惨な顔で来た、私の杞憂が杞憂でなかつたことを証拠立てゝゐる、昨夜のよい酒が今朝のわるい酒となつたのか、いたましい事実である、私は君を責めずにはゐられない、亡弟の忌中であり、学校職員であり、夫であり父である君としては、あまりに不謹慎である、君よ、自ら苦と罪とを求めたまふな、しばらく寝たまへと私がいふ、どうしても寝られないと君はいふ、さびしい問答のかなしい真実である、……飯が出来るのも待たないでJさんといつしよに帰つていつた。……
午後、ハガキを投凾すべく、石油を買ふべく街へ出かける、小郡にもガソリンガールが出現した、その軽快愛すべしであつた。
地虫が鳴きだした、地上は夏でも地中は秋だらう。
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・草しづかにして蝶がもつれたりはなれたり
糸瓜植ゑ
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