熟睡した快さ、雨の音のうれしさ。――
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・よい雨の窓をあけはなつ
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塩はある[#「塩はある」に傍点](何と塩の尊くて、そして安いことよ)、その塩で御飯をいたゞきませう。
いよ/\本格的梅雨となつた。
どこも田植で、純日本的風景[#「純日本的風景」に傍点]が展開されてゐる。
樹明君から来信、私が酒を買ひ、君が下物を持つてくることになつた(酒代は、ありがたや、句集代を樹明君が保管してゐてくれたので、十分、十分、十分である)。
合羽を着て酒買ひに。
約をふんで、樹明君がやつてきた、鮹と胡瓜とを持つて。
うまい酒だつた、酔うて倒れた、眼が覚めたらもう朝が来てゐた。
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・さみだるゝや真赤な花の
・濡れて尾をたれて野良犬のさみだれ
・はたらく空腹へさみだれがそゝぐ
・梅雨空のしたしい足音がやつてくるよ(改作)
・あめのはれまの枇杷をもいではたべ
・梅雨あかり私があるく蝶がとぶ
・びつしより濡れてシロ掻く馬は叱られてばかり
   追悼
・夏木立、そのなかで首をくゝつてゐた
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 六月廿三日[#「六月廿三日」
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