る、そこは彼にとつて唯一の安楽郷だ!
[#ここから2字下げ]
  今日の行乞所得
米一升六合 銭四十一銭
[#ここで字下げ終わり]
途上一杯の酒、それこそまさに甘露!
汽車は便利以外の何物でもない、自動車は外道車だ!
足で歩くにまさるものなし、からだで歩け[#「からだで歩け」に傍点]。
今日の汽車賃三十銭は惜しかつた。
[#ここから2字下げ]
・寝ころべば筍も生えてゐる
・山鶯も山頭火も年がよりました
・梅雨空をキヤルメラふいてきたのは鮮人
・水の音、飯ばかりの飯をかむ
・おばあさんが自慢する水があふれる
・いつかここでべんたうたべた萱の穂よ
・笠きて簑きて早乙女に唄なく
・笠をぬぎしつとりと濡れ
・ふるもぬれるも旅から旅で
・禿山しみじみ雨がふるよ
・合羽きるほどはふらない旅の雨ふる
・青葉に雨ふりまあるい顔
[#ここで字下げ終わり]
[#改ページ]

 六月廿一日[#「六月廿一日」に二重傍線]

暮れきるまへに帰庵した、さつそく御飯を炊く、筍をひきぬいてきて煮る、掃く、拭く。……
安心満腹、前後不覚、よい雨の夜のよい眠だつた。

 六月廿二日[#「六月廿二日」に二重傍線] 夏至。

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