てゐる。
まだ蚊帳なしで寝られたのはよかつた、蚤の多いのには閉口した、古いキングを読んだり隣家のレコードの唄を聞いたり、――これもボクチン情調だ。
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朝風すゞしく馬糞を拾ふ人と犬
・山里をのぼりきて捨猫二匹
捨てられて仔猫が白いの黒いの
・夏草の、いつ道をまちがへた
・虫なくほとりころがつてゐる壺
・道がなくなればたたへてゐる水
・これからまた峠路となるほとゝぎす
・ほとゝぎすあすはあの山こえてゆかう
[#ここで字下げ終わり]
六月廿一日[#「六月廿一日」に二重傍線]
習慣で早く眼が覚めたが起きずにゐた、梅雨空らしく曇つて、霧雨がふつてゐた。
七時出立、すぐ行乞をはじめる、憂欝と疲労とをチヤンポンにしたやうな気分である。
時々乞食根性、といふよりも酒飲根性が出て困つた、乞ふことは嫌だが飲むことは好きだ。
ひさ/″\で、飯ばかりの飯[#「飯ばかりの飯」に傍点]をかみしめた、そのうまさは水のうまさだ、味はひつくせぬ味[#「味はひつくせぬ味」に傍点]はひだ。
本降りとなつたが、わざと濡れて歩きつゞけた、厚東駅まで八里、六時の汽車に乗つた。
山頭火には其中庵があ
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