黴だらけの身のまはりをあらうてはあらふ
・田草とるしたしさもわかいめをとで
・まへもうしろも耕やす声の青葉
いなびかり畑うつ音のいそがしく
・かみなりうつりゆく山のふかみどり
夕立たうとして草は木は蝶もとばない
・雨はれた若竹にとんぼが来てゐる
・雨のいろの草から草へてふてふ
・暮れきらない空は蜘蛛のいとなみ
・街へ出かける夕立水のあふれてゐる
・蓮田いつぱいの蓮の葉となつてゐる夕立晴
・夕立晴の花をたづねてあるく
つきあたりはガソリンタンの[#「ンの」に「マヽ」の注記]うつくしいペンキの模様
・夕立が洗つていつた月がまともで
寝て月を観る蚊帳の中から
[#ここで字下げ終わり]
何となく、不安、動揺、焦燥、憂欝――身心の変調を感じる、その徴候の一つとして連夜の不眠がある、また行乞の旅に出る外あるまい。
清閑、自適、任運、孤高――さういふところへ私の心はうごいてきて、そしてその幾分かをあたへられてゐるのであるが、私はさらにうごいてゆかなければならない、うごきつゝある、うごかずにはゐられないのである。……
七月八日[#「七月八日」に二重傍線]
晴、緑平老を迎へる日である、待つ
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