らない。
暑さは植物にもこたえる、山東菜が芽ぶいたことは芽ふいたが、春のやうに成長しない。
雷電、雷鳴、これで梅雨もあがるのだらう、今日から盛夏。
夕立が晴れて、やりきれなくて街へ出かける、わざ/\出かけてやうやく一杯だ、だがその一杯は百杯万杯に値する、ほんにわたしは酒好きで、酒好きは酒飲む外ない!
酒一杯ひつかけて、そして、花と句とをひらうてもどつた。
樹明君から、キヤベツとキユウリとを送つてきた、明日のために、明日は緑平来、そして白船来の日である。
しづかな、ほんとうにしづかなゆふべであつた。
△いのちのよろこびはしづけさ、しめやかさにあると思ふ。
今宵は十五夜である、月がうつくしかつた、昼寝したゝめに、そして多少興奮してゐるために、いつまでもねむれなかつた。
今日も私は俳句屋[#「俳句屋」に傍点]だつた(午前は乞食坊主だつたが)。
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・楊桃《ヤマモモ》は枝ながら実家《サト》のおみやげに
・これで昼飯にしよう青田風
・日ざかりのきりぎりすは鳴きかはし
・橋の日かげへ女ばかりのボートで
うらみちは夏草が通れなくしたまんま
・もどるより水を火を今日の米をたき
・
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