・畑いつか田になつた稲のそよいでゐる
・まだかきをきをかきをえてゐない腹のいたみをおさへ
 梅雨ぐもり、見たことのある顔がくる
 花草にしやがんだ女で銭のやりとり
・青田のまんなかを新国道はまつすぐな旗立てて
・ひえ/″\とからだをのばし蛇もうごかない
・庭も畑も草のしげりゆく草
[#ここで字下げ終わり]

 七月七日[#「七月七日」に二重傍線]

何だか不安な一夜だつた、そして朝飯の仕度はすつかり出来たのにまだ夜が明けない、また蚊帳にはいつてとろ/\まどろんだ。――
鋳銭司まで出かける、今月最初の行乞であるが、何分にも睡眠不足と※[#「气<慍のつくり」、第3水準1−86−48]気とで苦しくてしようがない、それをこらへて二時間だけやつと行乞、それでも今日一日の生命を保つには十分すぎるほど戴いた。
徃きは涼しかつたが、返りはとても暑かつた、道ばたの木槿が咲いてゐた。
行乞は身心晴朗でなければならない[#「行乞は身心晴朗でなければならない」に傍点]、足もかろく気もかろくなければならない、そしておちつき[#「おちつき」に傍点]がなければならない、すなほさ[#「すなほさ」に傍点]がなければな
前へ 次へ
全32ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング