煮えた
・ゆふべはうれて枇杷の実のおちるしめやかさも
・とほく郭公のなき何かこひしい
樹明君に二句
・いつもたづねてくれるころの夕風がでた
・ぬくめしに雲丹をぬり向きあつてゐる
追加三句
・そんなこともあつたやうな夾竹桃の赤さで
・旅は何となく草餅見ればたべたくなつてたべ
・よばれる草餅の香もふるさとにちかく
[#ここで字下げ終わり]
七月六日[#「七月六日」に二重傍線]
さすがに昨夜はよく眠られて、今朝はすこし寝すごした、でも五時半頃だつたらう。
手作りの初茄子一つもいできて味噌汁の実にする、とてもうまかつた、珍重々々。
心さわやかに身こゝろよし。
冬村君の仕事場を久しぶりに訪ねる、針金を貰ひ、らつきようの漬け方を習ふ。
私は老いてます/\健やかである、論より証拠、若い時よりも今頃の方が筋肉が肥えてゐる(無論かたぶとりだ[#「かたぶとりだ」に傍点])、それは果して幸か不幸か、喜ぶべきか悲しむべきかを私は知らない、私としては、私は生きられるだけは生きやう、生きてゐるかぎり、その日その日を十分に生きよう、言葉をかへていへば、今日を今日として私の力の全き今日たらしめる外な
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