七月五日[#「七月五日」に二重傍線]
徹夜読書、腹が空[#「空」に「マヽ」の注記]つたので、大山さん持参のうどんを茹でゝ食べる、やさしくてうまかつた。
朝風に病床を払ふ、そして洗濯、掃除、草取、等々。
街へ出かけて買物、それから入浴、どうやらいつもの私になつた。
外へ出ると、ことに田の草取を見ると、炎天[#「炎天」に傍点]だと思ふ。
筍もをはりらしい三本をぬく(うち一本は隣地のを失敬!)ぬいて、すぐむいで、ゆつくり味ふ。
帰宅途上、樹明君来庵、折よく御飯が出来たばかりで、しかも君の最大好物雲丹[#「雲丹」に傍点](これも大山さんのお土産の一つ)があつたので、夕飯をあげる、何とそのうまさうなたべぶり!
夜はおそくまで蚊帳の中で読書、極楽浄土はこゝにあり!
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・明ける水音のする枯木焚きつける
朝の蚊のするどくてあれもこれも
・庵にも赤い花が咲いてゐる日ざかり
・見おくるかげの、雑草の暮れてゆく
・人去れば青葉とつぷり暮れた
・かさりこそりと音させて鳴かぬ虫がきた
・これでをはりのけさの筍をぬく二本
・さつと夜の雨が青葉たゝいていつた
・ぬくよりむぐより筍のお汁が
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