なる明るい雨ふる
晴れると開く花で
・梅雨空へ伸びたいだけ伸びてゐる筍
・降つたり照つたり何事もなくて暮れ
追加一句
・日が長い家から家へ留守ばかり(行乞)
窓へ竹の子竹となつて(追加)
[#ここで字下げ終わり]
六月廿九日[#「六月廿九日」に二重傍線]
今朝は一粒の米もないから、そして味噌は残つてゐたから、それだけ味噌汁にして吸ふ、実は裏から筍二本!
夜明けの蛙の唄はよろしい。
黴には閉口、もつとも梅雨と黴とは離れられないが。
断食――たゞしくは絶食、私の今日の場合では――それもよからう、よからうよ。
葉が落ちる、柿の葉はばさり[#「ばさり」に傍点]――昔の人は婆娑[#「婆娑」に傍点]と書いたがその通り。
虻には困る、蚋にも。
日が照れば、何とうつくしいトカゲの色ごろも!
虫の声はいゝ、コウロギはまだをさなく、キリギリスはいゝ。
曇、行乞は今日も駄目。
適意――自適――この言葉にふくむニユアンスが、すなはち、私のニユアンスだ、――かういふ生活もないことはない。
娘さんがうたふ、梅をもいでゐる、その梅の実を一升買ふ。
昼飯は五厘銅貨を豆腐に代へて、それですます。
△豆腐
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