日」に二重傍線]
早すぎるけれど、寝床でぐづ/\してゐるのは嫌だから跳ね起きる、そしてあるだけの米を飯にする。
雨、雨の音はいいな、その音に聴き入る、身心なごやかになる。
昼の蚊は憎いな。
敬坊から来信、明日来庵といふ、うれしいな。
敬坊は人道的[#「人道的」に傍点]、樹明君は人情的[#「人情的」に傍点]、私はそのどちらでもあり、そのどちらでもない、むしろ非人道的、非人情的でありたいと考へてゐる(感傷的であるのは恥づかしい)。
梅雨らしく降つたり晴れたりする、やむなく行乞は見合せる、明日の米がないけれど、明日は明日の事だ、明日の事は明日に任しておけ!
午後は草取、取らずにはゐられない草だけ取る、雑草、雑草、雑草風景[#「雑草風景」に傍点]は悪くない、其中庵にふさはしい。
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・あんなに高く蜘蛛が網張る朝焼
朝焼しめやかな雨がふる
・朝焼の大きい葉が落ちた
・雨が地べたをたたく音の中
・昼も蚊が喰ふ肉体をいたはる
・赤い花のしぼめば白い花のひらく
・伸びあがつて蔓草のとりつくものなし
雑草みんないつしんに雨を浴びて
・竹の子も竹となつた窓の明け暮れ
・竹の子竹に
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