足なく剰余もない生活、さういふ生活を私は欣求する、さういふ生活がほんとうではあるまいか。
△自浄吾意[#「自浄吾意」に傍点]、これが人間生活の基調でなければならない、念々不停流[#「念々不停流」に傍点]、これが生活態度でなければならない、朝々日は東より出で[#「朝々日は東より出で」に傍点]出で[#「出で」に「マヽ」の注記]夜々月は西に沈む[#「夜々月は西に沈む」に傍点]、――私たちの生活はこゝから出発してこゝに到着しなければならない。
樹明来信、これで私も安心した、どうやら因縁が熟して時節到来したらしい、お互にしつかりやりませうよ。
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 よい朝のよい御飯が出来た
 草ふかくおどりあがつたよ赤蛙
 晴れさうなきりぎりすのないてはとぶ
・ちぎられてまた伸びてもう咲いてゐる
・いつもかはらぬお地蔵さんで青田風
・水音をふんで下ればほととぎす
・しづむ陽をまへにして待つてゐる
・すつぱだかへとんぼとまらうとするか
・ふりかへるうしろすがたが年よつた
 雑草にうづもれてゐるてふてふとわたくし
・とんできたかよ螢いつぴき
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 六月廿八日[#「六月廿八
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