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(未定稿)[#「(未定稿)」は底本では、掟の文章の上に横書き]
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一、辛いもの好きは辛いものを、甘いもの好きは甘いものを持参すべし。
一、うたふもをどるも自由なれども春風秋水のすなほさあるべし。
一、威張るべからず気取るべからず欝ぐべからず其中一人の心を持すべし。
[#ここで字下げ終わり]
蠅はほとんどゐない、誰かゞ連れてきたか、私についてきたか、時々二三匹ゐることもあるが、すぐ捕りつくせる、蚊は多い、昼も藪蚊が出て刺す、朝夕は無数の蚊軍が私一人をめがけて押し寄せる、蚊遣線香が買へないから、私はさつそく蚊帳の中へ退却する、そしてその小天地を悠々逍遙する。……
午後は畑を中耕施肥した、トマトよ、茄子よ、胡瓜よ、伸びよ、ふとれよ、実れよ(人間はヱゴイストですね!)。
なごやかな一日だつた。
樹明君はどんな様子か、敬坊の来庵はいつだらうか、逢ひたいな。
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・朝風すゞしく爪《ツメ》でもきらう
・なにかさみしい茅花が穂に出て
・草しげるそこは死人を焼くところ
 蜘蛛が蠅をとらへたよろこびの晴れ
 からつゆやうやく芽ぶいたしようが
 たま/\人が
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