互に共通の弱点を持つてゐるのだから、その切なさはよく解る、よく解るだけそれだけ、私自身に鞭つ意味に於て、君に苦言を呈せざるを得ない(伊東君に対しても同様だ)。
石油がなくなつたから、そして買ふことが出来ないから、暮れると直ぐ寝た、寝た方がよい、読むよりも、考へるよりも。
こゝ二三日、どういふものか句が出来ない、それもよからう。
五月廿九日[#「五月廿九日」に二重傍線]
曇つてはゐるけれど、今日はどうしても行乞しなければならない、ずゐぶん早く起きたが、あれこれ手間取つて、出かけたのは六時すぎだつた、九時から二時まで山口市街行乞、それからまた歩いて帰庵、徃きの三里は何でもなかつたけれど、帰りの三里は少々こたえた、幸にして焼酎といふ元気回復薬を飲んだけれど。――
ほんとうに久しぶりに草鞋を穿いた、草鞋でアスフアルトの新国道を歩みしめてゆく心持はよかつた。
山口で、ゆくりなく、川棚温泉で昨夏相識の坊さんに邂逅した、彼は俗坊主だけれど、憎めない人間だ。
帰庵して、胡瓜苗を植ゑ、唐辛苗を植ゑ、種生薑を植ゑ、月見草を植ゑた、イヤハヤ忙しい事。
そしてまた、街へ出かけた、今夜なくてはならない物を
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