はなか/\むつかしい)。
今夜はこの宿は夫婦喧嘩をして、やたらに子供を泣かしてゐる、坊や泣くな、お客がなくなるよ!
隣室の萩老人とおそくまで話す、話してゐるうちに、まざ/\といやしい自分を発見した。
鰒の中毒には、日本蝋[#「日本蝋」に傍点]、または、海賊のクロミ[#「海賊のクロミ」に傍点]が適薬ださうな、人助けのためにも覚えてをきたいと思つた。
源三郎君から来信、星を売り月を売る商売をはじめます(天体望遠鏡を覗かせて見料を取るのださうである)、これには私も覚えず微苦笑を禁じえなかつた。
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捨てたものにしづかな雨ふる
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 六月七日 木下旅館(三〇・上)

転宿、チヨンビリ帰家穏座のこゝち。
壺を貸して下さつたので、すい葉とみつ草とを摘んで来て活ける、ほんによいよい。
午前は午[#「は午」に「マヽ」の注記]後は晴。
小串へ行つて、買物をする、財布を調べて、考へ考へ、あれこれと買つた、茶碗、大根おろし、急須、そして大根三本、茶一袋、――合計金四十三銭也、帰途、お腹が空いたので、三ツ角の茶店で柏餅を食べる、五つで五銭。
草花を摘みつゝ、柏餅を食
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