べつゝ、酒を飲みつゝ、考へる。――
うつくしいものはうつくしい、うまいものはうまい、それが何であつても、野の草花であつても一銭饅頭であつてもいゝのである、物そのものを味ふのだから[#「物そのものを味ふのだから」に傍点]。
飲める時には、飲める間は飲んだがよいぢやあないか、飲めない時には、飲めなくなつた場合には、ほがらかに飲まずにゐるだけの修行が出来てゐるならば。
私も酒から茶へ[#「酒から茶へ」に傍点]向ひつゝあるらしい、草庵一風の茶味、それはあまりに東洋的、いや、日本的だけれど山頭的[#「頭的」に「マヽ」の注記]でないこともある。
茶道に於ける、一期一会[#「一期一会」に傍点]の説には胸をうたれた、そこまで到達するのは実に容易ぢやない。
日にまし命が惜しくなるやうに感じる、凡夫の至情[#「凡夫の至情」に傍点]だらう、かういふ土地でかういふ生活が続けられるやうだから!
此宿はよい、ホントウのシンセツ[#「ホントウのシンセツ」に傍点]がある、私は自炊をはじめた、それも不即不離の生活の一断面だ。
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 朝の水くみあげくみあげあたゝかい
・いちご、いちご、つんではたべるパ
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