音を見出した
[#ここで字下げ終わり]
隣室の客の会話を聞くともなしに聞く、まじりけなしの長州辯だ、なつかしい長州辯、私もいつとなく長州人に立ちかへつてゐた。
カルモチンよりアルコール、それが、アルコールよりカルモチンとなりつゝある、喜ぶべきか、悲しむべきか、それはたゞ事実だ、現前どうすることもできない私の転換だ。

 六月五日 同前。

朝は霧雨、昼は晴、夕は曇つて、そしてとう/\また雨となつた。
朝の草花――薊やらみつくさ[#「みつくさ」に傍点]やら――を採つてきて壺に投げ※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]した。
今日は日曜日であり、端午のお節句である、鯉幟の立つてゐる家では初誕生を祝ふ支度に忙しかつた(私のやうなものでも、かうして祝はれたのだ!)。
方々からたより[#「たより」に傍点]があつた、その中で、妹からのそれは妙に腹立たしく、I君からのそれはほんたうにうれしかつた(それは決して私が私情に囚はれたゝめではないことを断言する)。
隣室のヒステリー夫人ます/\ヒステリツクとなる、宿の人々も困り、私たちも困る。
萩の客人から、夏密[#「密」に
前へ 次へ
全131ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング