土の蚯蚓のやすくもあるかな
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労れて戻つて(此宿へは戻つたといつてもいゝ、それほど気安くて深切にして下さる)そして酒のうまさは!
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・つかれた脚を湯が待つてゐた
・雲がいそいでよい月にする
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七月十八日
晴れて暑い、ぢつとしてゐて汗がにじみでる、湯あがりの暑さは、裸体になることの嫌いな私でも、褌一つにならずにはゐられない。
昨日の行乞所得の残金全部で切手と端書とを買つた、それでやうやく信債の一部を果した。
酒が好きなために仏門に入るやうになり、貧乏になつたために酒毒から免かれてゐる、世の中の事は変なものであるわい(酒のために自己共に苦しみ悩んだ事はいふまでもないが)。
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・朝からぴよんぴよん蛙
・穂すゝきへけふいちにちの泥を洗ふ
・月あかり撰りわける夏みかんの数
□
・聴くでもないおとなりのラヂオ泣いてゐる
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七月十九日
晴、いよ/\天候もきまつたらしい、私の心もしつかりしてくれ、晩年の光[#「晩年の光」に傍点]を出せ!
此宿の漬物はなか/\
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