うまい(木賃自炊だが、朝の味噌汁と漬物とは貰へる、今日此頃の私は無一文だから漬物でお茶漬さら/\掻きこんでゐる)、殊に今朝は茗荷がつけてあつた、何ともいへない香気だ、暑さを忘れ憂欝を紛らすことが出来る。
夏は浅漬がよい、胡瓜、茄子、キヤベツ、何とか菜、時々らんきようも悪くない、梅干もありがたい。
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山の夏みかんもぐより売れた
山からもいで夏みかんやばらばら雨
・朝は涼しい茗荷の子(夏茗荷である)
・はだかではだかの子をだいてゆふべ
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七月廿日
曇、土用入だから、かん/\照ればよいのに。
朝の山へ、蜘蛛の囲を分けて登つて萩を採つて来て活けた、温湯に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]したが、うまく水揚げしてくれるとうれしい。
昨夜はとろり[#「とろり」に傍点]としたゞけだつた、こんなでは困る。
盆草――精霊草。
人間は(いや、あらゆる生物は程度の差こそあれ)自分の好きなものを中心として(或は基本として)万事万物を観察する(または換算する)、それが自然でもあり真実でもある、といふ訳で、私は酒を以てす
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